引くか押すか?
以前ウエディングプランナーをしていました。
ウエディングドレスや綺麗なお花と華やかなシーンを連想させる仕事ですが、
私は、人生を彩る最も大切なイベントの一つである結婚式とは、
接客業の最たるものではないかと、
自らの接客技術をとことん磨き、挑戦してみたいとの思いでスタートしました。
ただそこで気づいた実態とは、
もちろん接客業の最たるものであることは間違いありませんでしたが、
更に大事な要件がありました。
それは「営業力」。
結婚式のお客様は通常、どんな会場でも、ネットや雑誌から資料請求をして、
そこから見たい会場に足を運んで見学、見積りなど話を聞いて会場を決定します。
イメージとして「自分たちの希望に合う会場が見つかるまで」なんて言って
何件も何件も少しずつ見ていけばいいのではないかと当初思って見学を始めますが、
実際のところは、なかなか1件の見学で3時間余りの時間がかかり、
「この先この見学作業を何度も繰り返す。。。」ということを考えただけで
精神的に疲労を感じ、また、プロポーズを受けた後は、お互いの両親への報告、
指輪の購入、住まいの検討などなど様々なTo Doが盛りだくさんで、
結果、
結婚式会場の決定は、最初の2から3件目で大体の決定までなされることがほとんどで、
その中でチャンスをもらう結婚式場やホテルはその機会を最大限生かし、
成約までご案内することを目指す必要があります。
そこでお客様が見学にくださる時間は通常2~3時間。
その中で会場の見学や特徴、見積り、日程の空き状況など全ての項目を網羅し、
成約のご決定をいただくには、相当の「営業力」が不可欠となってくるのです。
その営業力。
私は、営業力の真髄は、押す力ではなく、引く力であると信じています。
ちょうど昨日、
現在持っている指輪をリフォームしたく、ある小さなジュエリーショップに行きました。
担当の方が、私の持っていた指輪の状況や内容をよく確認してくださり、
その後、希望に合わせたデザインを考え描いてくださいました。
その間約1時間半ほど。
担当の方が金額の話に触れることは一度もありませんでした。
私のリフォームを考えた理由や気持ちにこそ触れ、
一度も金額のことには触れない。
むしろ金額に触れたのは私の方でした。
「まずはお客様の気持ちを理解して、後悔しない指輪作りのお手伝いがしたいんです」
そう仰いました。
とりあえず1件目くらいに考えていた私は、金額を確認し即決。
とても気持ちよく店を後にしました。
よく結婚式までお手伝いした新郎新婦がお手紙をくださり、
その中に書き記してくださったこと。
それは「どの会場の担当の人よりも、私たちの気持ちに耳を傾けてくれた。この人だったら、一緒に結婚式を作ったら素晴らしい結婚式になるだろうなと思った。」と。
結婚式の平均金額は私がいた会場では、
約400万円から600万円という初期見積りでしたが、
たった2時間ほどのお話で、その場で即決してくださる、なぜそう思えるのか、
それは「この人がいるこの会場だったら大丈夫」と
自分の決断にいかに信頼ができるのか、私はその後押しをするのが営業力であり、
押す(=自分が前に出る)のではなく、
お客様を最大限立てる「(自分の身を)引く力」なのだと
数ある経験のなかで、お客様に教えていただきました。
だって、そのお金を出すのはあくまでもお客様なのですから。
いつもそうした営業力を常々考え、特にプロでない対応を受けると
必要以上に疑問を感じてしまうたちですが、
今回はすっかり素晴らしい営業力に即決をした私です。
やっぱり営業には「引く」、なのですねぇ。